< No.27 素肌 >
木漏れ日が少しだけ鬱陶しい。
カーテンを引いてしまおうかと思う。
ただそうすると君の爪の先に光る陽だまりが消えてしまうので
もう少し我慢しておくことにする。
ソファの肘掛に乗った腕の先が綺麗で
本をめくるとき僕は一瞬だけそこへ視線を投げた。
指先から滴る
ワインと
ペディキュア
毛布からはみ出した君の腕は
一寸寒そうにも見える。
僕があげたカーディガンを
どうして着てこなかったの。
ソファのビロードは深い緑で
君の髪が金色だから良く似合う。
僕があげたカーディガンよりずっと似合う。
唇を彩る
ワインと
リップグロス
無作為に選ばれた洋服も。
ルーレットのダーツを縫いこんだ靴も。
そのひらひらとしたリボンだけは例外だけれど
君はとても綺麗だ。
本のページに視線を落としながら
君が囁く声を聞いている。
歌が上手な声。
僕の大好きな言葉。
暗闇を彩る
ワインと
君の素足
木漏れ日が少しだけ鬱陶しい。
今日はもう読書は終わり。
閉じた本を膝に乗せて。
少年の人形が微笑んでいる。