「パルスなんだよ。」
って、君が言った。
雨が降るよって言うときより、
ずっと気安い感じだった。
「繰り返し継続させる為のシステムなんだよ。」
「そうじゃないと飽きるから。」
私は君の眼を見て、
君が本気なのを確かめてから、
「そうだね。」
って頷いた。
「そうかも知れないね。」
世の中で一番怖いものは
ヒトの形をしているから
解りやすくて
私達は1秒でも早く
逃げなくちゃいけない
「そのパルスは、」
長い長い沈黙と歩行の後に
私が顔を上げて口を開いたら
君は振り向かないまま、
なあに、
って、首を傾げて。
「そのパルスは、私の中にもあるのかな。」
少し、困ったみたいに足を止めて、
それからとびきり何か難しい事のように、
腕を組んで歩くのを止めた。
思考の為に必要な数秒間。
この世の何より尊い、
脳の中の世界交流。
「そうだね。」
残酷な言葉だな。
思いながら、
私は嬉しくて笑った。
(それって、生きてるって事、)
声に出さないで、
君の背中に、
「そうかも知れないね。」
訊いてみたら、
繰り返して、君も笑った。
三つ目の角を曲がったら、
そこが僕の家だよって言うみたいに。
それを止める為の
黒くて重たい塊は
いつだって君の手の中にあった
私達は歩きながら、
黙って、ずっと歩きながら、
私達のパルスが止まるまでの、
時間を数えた。