空はどこまでも広くて青くてあんまりにも高いから、隣に君がいないって思った。
1992年、春。
私にとって大切な世界の終わり。
雨が降ってたかどうかは覚えていない。
真っ黒なワンピース、もしかしたら濃紺だったかもしれなくて、
胸についてた花の飾りが、式にあわないからって外して貰って、
それをあの子にあげたかったのだけ覚えてる。
白い布は捲ることを禁止されて、
私は初めて世界の終わりに立ち会った。
「 人は死んだら燃やされるのよ。
灰になって骨になって
土に返るの。 」
言う通りだって思った。
知ってたんだねって知った。
壁を駆け上がって飛び蹴りするやり方とか、
ブランコを凄く高くまで上げるこぎ方とか、
世の中の見方を私に教えてくれた。
君なら知ってて不思議じゃないと今でも思う。
ずっと私は上手く生きられなくて、
それを初めて君は受け入れてくれた。
生きる事は難しいんだよって認めてくれた。
「 思考の連続が生命を紡ぐの。
停滞したら、負けたのと一緒。 」
私の目が世界を作るんだって知ってた。
私より彼女のほうが知ってた。
私は子供で、
まだずっと幼くて、
愚かで、無知で、だから質問も出来ずに、
黙ってずっと、君の話だけ聞いてた。
喋る事のしんどさを知っている君は、
私に言葉を強要しなかった。
今聞きたい事があるよ。
「 どうしてヒトは死にたがるのでしょう。 」
血を見たいのは本能?
試してみたけれども解りませんでした。
それは癖になると抜け出すのに時間のかかる自傷癖。
止めるにはどうしたら良いのかなあ。
止めてあげたいヒトがいるんだよ。
愛してるの。好きで。凄く好きで。
一緒に生きたいって思う。
それがなければ確認できないって気持ちを私は解ってしまう。
私も確認したかったから。
でも、確かめられた事はなかった。
それが罪じゃない事を伝えたい。
それが悪い事じゃないんだよって。
血を見たければ流したっていい。
その為に刃物を使うのは必然でしょう。
でもね、その為に死ぬなら、最初から死んだ方が良いんだ。
じわじわ、なんて、なくていいんだよ。
真正面から向かえないなら、私と生きてください。
あの子は真正面から向かっていったよ。
自分で選んで行ったよ。
そこに後悔があったかどうかなんて私は知らないけれど、
それはこれだけ重いことなんだよ。
私はまだ、今でも、
世界に彼女を探してしまう。
貴方が確認したいのは生きている事で。
貴方が知りたいのはその痛みと熱で。
それなら貴方はまだ続けられるでしょうって。
でも、伝わらないんだ。
難しくて。
伝わってるのかもしれないけれど、
貴方はそうやって、死に向かってる。
君ならなんて言うでしょう。
独立を推奨?
個人を尊重?
教えて欲しいって思った。
今君にあって話しをしたい。
十歳の君は二十歳の私でした。
君の居ない世界を、
私は生き続けます。
愛を込めて。
Happy Birthday to you.
2003.8.8