この世界でただ一つ
すべてのものに等しく降り注ぐ慈悲だと言うのに
何故 皆はそれを恐れるのでしょう?
せんにひゃくさんじゅうの優越
もうずっと遠い昨日
私達の町には それが降ってきました
美しく輝く赤い星
それは全てを自身の色に染めて
後に灰色の砂を残しました
かなしみと いかりと なげきが
今も私の耳を掻き鳴らす
美しい音色に
耳障りな響きで
だから 私は耳を両手でしっかりと塞がないと
あなたの声を聞くことも出来ません
あれからずっと 町には何もなくなってしまった
気に入っていたキャンディ・ショップは溶けてしまった
毎日通った学校は死んでしまった
愛した人は影になった
教会のてっぺんの
突刺すような十字架が
ぽとり 落ちているだけ
かみさま
教えてくれますか
あの時何がおきたのですか
私が わたしたちが
カクレンボをしている間に
かみさま
教えてくれますか
皆はどこへいったのですか
私が あのこたちが
カクレンボをしている間に
かみさま
かみさま
愛ってなんですか
憎悪ってなんですか
憎しみが争いを生むのですか
守る為に戦うのですか
誰かに会いたいので
私は歩きました
お腹が空いたけれど
喉が乾いたけれど
私は歩きました
偶に 誰かに会いました
彼らは空へ黒い手を伸ばして
灰色と赤と白の空に手を伸ばして
口々に叫んでいました
「死にたくない!」
「死にたくない!」
「助けて!」
「助けて!」
彼らの開いたままの口は
時々骨を覗かせながら
聞こえない音で叫んでいました
懸命に叫んでいました
かみさま
教えてくれますか
どうして死にたくないのですか
どうして死ぬのですか
何故わかるのですか
この体が溶けて
白い赤い滴を零しているからですか
やがて
誰もいない道の先に
私は灯りを見ました
白い灯りでした
私を真っ直ぐに照らしている
涙が出るほど美しい灯りでした
『 』
『 』
彼らは 何と言ったのでしょう
私にはわかりませんでした
かみさま
教えてくれますか
何故殺しあうのですか
何故愛し合うのですか
何が違うのですか
何が基準ですか
私は全てのひとに尋ねたい
何故憎みますか
何故愛しますか
理由なんて なくていいのでは?
本当は 何もないのでは?
かみさま
私を愛していますか
わたしたちを憎んでいますか
あなたには何もないのでは?
あなたには慈悲しかないのでは?
だからこそ降り注ぐ死の灰を身に受けて
私はとても安らかな気持がするのです
この町は死んでしまったけれど
私は死んでしまったけれど
あなたは慈悲深いけれど
人々は憎しみ合うのだけれど
人々は 愛し合うのです
人々は なにもなくとも
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