[破棄される契約]

約束を破りたくなった

木曜日の午後五時、水族館のデートとか、
球技大会、代役のバスケット選手とか、
社会の規定、未来の予定、

そう言うのを裏切りたくなった

僕は君の家に行く途中
君は疑わずに僕を待ってる

破りたいな

君、どんな顔をするんだろう

そう思ったから

取り敢えず赤信号
車道を突っ切って僕は走った

一番害のない破棄
そんな気がしたので

 




[bar-コォド]

4で始まる13桁の数字で
私達の日常は須く統制されています。

ところで、

貴方の首の後ろに並んでいる
それはなんですか。

 

 

 

 



[ほおづき]

僕達の間にある壁は
どこまでも続くものだが
その薄さときたら驚くばかりで

近頃では
僕が考えているのか
彼女が考えているのか
わからなくなりさえするんだ

意見がぶつかって戦って
それでも折り合いは必ずつくのだけれど
僕には不思議でならない

これだけ薄い壁で
彼女が透けて見えても
僕には気付かないのを

呼び寄せる腕の強さも
掴み取る手の平の熱も


君が持っていないことは知っているから

僕らが君を見放す事はないけれど
君が僕らを見失う事はあるだろう

何の為の花火だい
何の為の月光だい

君の為なら光ったっていい

内側へ灯を入れてくれ

 



[怠惰なステージ独占者]

足りないよ
ぜんぜん足りない

もっとね、お前たちを
ぎゃふんと言わせてやりたいの

解る?

コール:全員
満席御礼:観客席

せーので「ぎゃふん」

僕はマイクスタンドに
ありったけの呼吸で大笑い

足りないね!
まだぜんぜんだ!

せーので「もっと!」

せーので「ちょうだい!」

飽き足りないね
お前たちはなあに?

底無し沼?
蛙が住んでるんだろ?

知ってるよ

僕は笑って
笑って笑って

最後に歌う

愛や恋じゃない
怨みも熱意もない

透明な歌

 



[第二次プラネタリウム]

北極星は本当に動きませんか
べガとアルタイルの距離はそんなに遠いのですか
僕は金星と言うものをもっと良く知りたいのですが
本当に天の川はミルクのようですか
あの赤い星の名前を教えて下さい
緑に光る星もありますか

訊きたい事が溢れて落ちそうです

リクライニング・シートに身体を預けて
君と二人