[電子の群れに]

嵐が来ると信じてた
暮れて行く空の赤
茜の雲
雨音は聞こえなかった
どうやって泣けば良い?
君はここに居ないのに
どうやって泣けば良い?
君さえここに居ないのに

繰り言
戯れ言
独り言

ただ黙って
シャッタを切る
 


[シロツメクサ]
一面に
白のスカートを
翻して

今はまだ春だから
きっと先に進めるだろう

君の黒いスカーフ
結び目の青い宝石
指先に一滴
涙の色の緑

王冠を編んでおくれよ
いつでも錯覚できるように

勿忘草
紫陽花
彼女は気まぐれに思い出す
僕は常に想う


 

 



[蒼眼]

愛おしいほど狂う
ブルーベルベットの
目をした
あの子をどこへやったっけ

どうせみんな同じさって
50回も60回も
同じことを繰り返し呟いた
あの子をどこへやったっけ

たどり着けないのはみんな一緒さ
涅槃は僕らの場所じゃない
イシュカリオンに行きたけりゃ
聖人になるしかないのさ

狂おしいほど愛す
クリアな空の淀む底

同じ言葉呟いて
あの子はどこへ行ったっけ
あの子とどこへ行ったっけ

 

[幻想四次元]

鉄道切符は 一枚限りの 不可逆物質

降りた瞬間 さようなら いずれまた

不可侵条約 結ぶ契りと 忘れる言葉

その水底に 沈めておく 記憶の破片

きみとなら 何処へでも 行けるから

きみとなら 何処へでも 行けるんだ


[願わない事象に]
どうにか自分を消してくれと
繰り返し口にする癖に

貴方は誰より強く
日の下を生きて居る


パラドクスに溢れた部屋
真実の満ちる空

泣いたって構わない
そう囁けば

貴方はまた笑う
貴方はまた笑う